#9 犬ヶ岬(いぬがさき)
子供の頃、この岬はとても怖かった。依遅ヶ尾の山から一気に海へ落ち込む急傾斜。大きな黒い岩が並ぶ断崖。暗くて飲み込まれそうな日本海。岬を覆う深緑色の森。岬へ向かう国道は絶壁の上を走り急カーブの先は何も見えない。
今でもその印象はあまり変わるところがありません。上の写真は西側の竹野漁港付近から見た犬ヶ岬の様子ですが、まるで海の中へ引きずり込まれてしまいそうな――確かに寝そべる犬のようではありますが、犬の姿を装ったオバケかもしれません。あるいは海坊主。
でも最近、すごく良いなあと思う場所を見つけました。犬ヶ岬のトンネルを抜けてすぐ左手に、岬の先端に向かう遊歩道があります。近くの犬ヶ岬遊園というところに駐車場があってアクセスも至便。例によって遊歩道とは言いながら未舗装の山道ですので歩きやすい靴と服は必要ですけれども。
しばらくその山道を歩くと視界が一気に開けます。よく晴れた穏やかな日なら遊歩道下の岩場に下りても大丈夫。遥か彼方まで広がる日本海の眺望を楽しめる、プライベートビーチならぬプライベート岩場。岬が波を遮るおかげか、特に東側の丹後松島の方は海面が穏やかで、一面の空色がたいへん綺麗です。海を見ながら読書なんか、いいかもしれない。
しかしなにしろ日本海なので、雨や風の日には全くおすすめしません。波にさらわれてしまいます。