#1 丹後半島(たんごはんとう)
関西では、結構知られているのかもしれません。丹後半島のこと。でも関東にしばらく住んでみた感じでは、知名度はさっぱりでした。どれくらいさっぱりだったかというと、天橋立が福井県だと思われていたり、京都府は海無し県だと思われてたりする。だから東京では「京都には海があるんだぞ」なんて知識を披露して物知り顔をできるのだけれど、自分の故郷が知られていないのはちょっと寂しいものです。丹後半島なんて、日本中どこにでもあるような取るに足らない出っ張りにすぎない。
でも、ひとまずこうして日本海に出っ張ってるのだ。少ないながらも人は住んでるし、ちょっとばかしの観光地がある。あと米と蟹と酒が旨い。さらに言うと、江大江戸八百八町や千年の都平安京よりも歴史が古い。これは結構自慢できます。みんな知らないけど、知ったらちょっとおもしろいかもしれない。学校の勉強よりも役には立たないかもしれないけれど、知ってもらえると少し嬉しい。だからこうしてこのウェブサイトに間借りして、ああだこうだと丹後について述べてゆきます。どうぞよろしくお願いします。今回は第1回ということで、おおまかに、丹後半島についてです。
丹後半島の位置は京都市から直線距離で北西に約100km、大阪や神戸からもほぼ等距離で、この直線100kmというのは他の都市と比べてみると京都―名古屋や東京―高崎、あるいは仙台―郡山といったあたりと同じで、結構な距離です。google mapの所要時間計算機能では京都市から丹後半島(京丹後市)まで京都縦貫自動車道を使って2時間13分。列車は直通の特急「はしだて」号を使って京都駅から峰山駅(京丹後市役所の最寄り駅)までが2時間28分と出ました。そういう、関西の北の端っこにあるのが丹後半島というわけです。地の果てであり、冬は寒い。
京都大阪方面から丹後半島を目指すなら、まずは京都縦貫道で大江山を越えなければならない。「大江山いく野の道の遠ければ」という、その遠い道です。あまりにも遠いので、冬場だと峠を越えた途端に雪景色になって、「これはとんでもない土地に来たものだ」と不安になります。平野に下りても不安が解消されることはなく、歌を詠んだ小式部内侍の母上も同じ気持だったにちがいない。心細い。峠を下ったら宮津で、天橋立があり、その向こうが丹後半島です。ただしそこは丹後半島の東側、表側であって、内陸に入ろうとすると低いながらも越えにくい山々が立ちはだかっており、水戸谷峠という心細い峠道を越えなければならない。無事に越えたらそこが丹後半島の内側、謂う所の奥丹後である。関西の奥にある丹後のさらに奥、どん詰まり。秘境。
半島の中には三つの平野があります。上の地図ではちょっと分かりにくいかもしれないですが、参考にしてみてください。まず真ん中が竹野川流域。これは水戸谷を越えると最初に下り立つ奥丹後の地です。それから、低い丘陵を挟んで西側に網野町。さらに西に久美浜湾。半島からは少し外れるけれど東側の加悦谷を含めてもいいかもしれません。とすると四つです。平野はほとんど田んぼで、山沿いに集落があり、平野でない場所は低い丘陵であるか、もしくは半島の東側には越えにくい山々が六百メートルほどの峰を連ねている。その山の中にも小さな村があって、ここでちりめんだよりの中から一枚を紹介することになるのですが、この「丹後半島」と名付けられた絵はそのような山中の村を描いたものです。
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